2014年5月2日金曜日

日本音楽理論研究会第24回(5月18日)例会のお知らせ

Announcements: The 24th meeting of SMTJ /18. May 2014/

関係者各位

暦はまもなく立夏。こちら東京は新緑が目に眩しい季節になりつつありますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?

毎度お馴染み日本音楽理論研究会から、第24回例会のお知らせです。
今回の例会は「ロシア」をテーマに取り上げました。ロシア構造言語学の音楽分析への応用、ストラヴィンスキーのロシア語の声楽を伴ったバレエ音楽の分析、スクリャービンの神秘和音と、合計3件の発表に加え、ミニコンサートも行います。発表概要は順次ホームページ等で発表の予定です。

◆ 第24回例会のページ(発表概要および関連情報)
http://www.geocities.jp/dolcecanto2003jp/R/reikai/honbu/24_140518/o/24_oshirase.htm
◆ 日本音楽理論研究会東京支部ブログ
http://smtjt.blogspot.jp/

音楽関係者のみならず、幅広いみなさまの奮ってのご参加をお待ちしております。
なお、当日資料準備のため、ご出席の場合はご一報いただければありがたく存じます。
また、研究会終了後の、「シュベール国立店」で行なわれる懇親会は毎回議論が白熱しております。
こちらからのご参加も歓迎いたします。

★★★ 日本音楽理論研究会第24回例会のお知らせ ★★★

   【ロシア音楽特集】

日時: 2014518日(日)13:30-17:50 (1310 受付開始) 
会場: 国立音楽大学AI(アイ)スタジオ 
(JR
国立駅南口下車、国立音楽大学付属幼稚園地下) 
186-0004 東京都国立市中1-8-25 TEL: 042-573-5633
参加費: 一般¥2000/学生¥1000 

■ 開会宣言 島岡譲(日本音楽理論研究会会長)

■ 3分プレゼンテーション(発表順) 

■ 発表150分): 
 川崎瑞穂 【研究報告】 「ロシア構造言語学と音楽分析 ―― 奥秩父山地の民俗音楽に関する音韻論的研究 ――」 

■ 発表250分): 
 池原舞 【研究報告】 「ストラヴィンスキー《結婚》」 

■ 会からの連絡

休憩15

■ ミニコンサート: =ロシア歌曲のひととき= (分析・解説資料配布) 
1. スクリャービン 《ロマンス》 (ca.1893) 
2. ラフマニノフ 《歌うな、美しき女よ》 Op.4 no.4 (1890-93) 
ソプラノ独唱: 小川えみ(本研究会専属歌手) ピアノ: 見上潤
 
■ 発表460分): 
 佐野光司 【研究報告】 「スクリャービンの神秘和音《交響曲第5番プロメテ》に至る過程」 

■ オープン・ディスカッション

■ 懇親会 (1800-) 参加費\2000

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※ 今後の活動予定 (開場はすべて「国立音がk大学AI(アイ)スタジオ」、参加費¥2000/学生¥1000

【予告なく日程・時間・内容等を変更する場合もありますので、常に最新情報をHPなどでご確認ください。】

☆ 25会例会 2014105日(日) 13301745

 =
大分県立芸術文化短期大学修了生による研究発表=
■ 「バルトーク研究~『ルーマニア民俗舞曲』sz.56の機能和声理論による分析」 石川智寛
■ 「ピアノソナタの分析~W.A.Mozart のピアノソナタ K.457 c moll 1楽章、第2楽章を例に~」 宮本鈴子
 =自作曲の分析=
■ 「自作曲の分析と、ブルーノート・ペンタトニックスケールについて」 平本幸生
■ 「自作作品の分析」 夏田昌和
■ 他未定
☆ 15会東京例会 20141213日(日) 13301745

■ 「オドエフスキーの神秘主義と音楽観 ――『ロシアの夜』第6夜をめぐって」 見上潤
■ 「「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集 作品28」 ―楽曲構造とピアニズムの分析― その2 (No.2,5,16,21)」 福田由紀子
■ タイトル未定(ベルクに関する発表) 今野哲也
■ 他未定

☆ 16回東京例会 2015329日(日) 13301745

■ 「ユーミンに関する発表(タイトル未定)」 寺内克久
■ 他未定

☆ 26回例会 2015517日(日) 13301745

※ 発表者募集中
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2014年3月21日金曜日

日本音楽理論研究会第14回東京例会 発表概要 寺内克久

The Beatlesの和声進行分析から、コード進行による作曲技法を考える」



イギリスのロックバンド、The Beatles(以下”ビートルズ”)の活動期間は1962年〜1970年のわずか8年であった。しかしその音楽的かつ商業的な成功は、ギネスワールドレコーズに「最も成功したグループアーティスト」と認定されており、様々な面において、その後のポピュラー音楽全般に新たな潮流を作り出した。

本発表では、ビートルズの全
213(公式/準公式アルバムより)のオリジナル楽曲から、特徴的な115例の和声進行を分類し、その和声進行の特徴の概略を紹介する。さらにその特徴を活用して、コード進行の枠組みを用いたポピュラー作曲技法の可能性を考え、ビートルズが残した音楽的遺産について和声面から言及する。

本発表で紹介するビートルズの楽曲例は、ハ長調の主要三和音を用いてト長調を作り出す《
A Hard Days Night》、長三和音の増四度進行と半音進行を組み合わせた和声進行を持つ《P.S. I Love You》、ポピュラー音楽において常套的和声進行である”ライン・クリシェ”を用いた例として《Something》、属七和音が連続する楽曲(変則ブルース的楽曲)の例として《Come Together》、CGDAの四つの長三和音が連鎖する《A Day In The Life》の五例である。

用意したその他全
115例は、ポピュラー楽理に興味のある方向けに全てエクセル表資料にまとめたので、あわせて検分頂きたい。

これらの例示する楽曲の和声進行について、ギターフレット
(指板)上での和音の押さえ方を用いて発表者が考えるビートルズ的和声進行作成の方法を示す。

そしてこの方法を活用し
C7sus4(構成音c-f-g-b)、Cm7(5)=7和音(構成音c-es-ges-b)Cdim(M7)=クリスタル和音(構成音c-es-ges-h)の三つの和音を各主題にして制作したポピュラー作品を提示する。

発表者はこうした「コード進行からのポピュラー楽曲作曲」の手法をビートルズ作品から学んできた。そしてこれらの和声進行を不定調性進行
(単純に調が定められない和声進行)と呼んでいるが、本発表で改めて「和声進行によるポピュラー作曲手法」についてその可能性を述べられればと考えている。

今回もまた、例示するポピュラー和声進行の事例や考え方等について、クラシック音楽の側から提言を頂ければ幸いである。

日本音楽理論研究会第14回東京例会 発表概要  大高誠二

「拍節の中の和声~「音の重なり」を超えて」

 和声は一般的に、ただ和音の連続として捉えられ、個々の和音がそれぞれ長さを持っていることがあまり意識されていないように思われる。だが、例えばアルペジオを1つの和音とみなすことができるのはなぜだろうか?それは、ある範囲にある音を合計して捉えているからである。我々は「音の重なり」としての和音の連続で和声理論を理解し、多くの音楽現象をこのモデルに還元して捉えている。

 だがこの還元は、実際には多くの前提を必要とする。我々は経験と勘によって容易くこの還元を行うが、その前提が意識されることは稀である。1つの例を挙げよう。アルペジオの形でトニックの直後にドミナントの根音が続くような場合、なぜドミナントの根音はトニックの5度音とみなされないのか。おそらく、そこで和音が変わったという認識を我々に与えている別の要因がある。発表者はこの第一の要因として拍節()を考える。和声が小節ごと、あるいは拍ごとに変わるのは、和声の変化が拍節の変わり目で起こるためである。

 本発表では、以上の考えを推し進め、拍節の側からの和声の新たな見方を提案し、「音の重なり」として和音を捉えることで隠されてしまう前提を炙り出し、和音概念の深化を目指す。この提案はまた、拍節を捉えるための、音の強弱以外による視点の探索の意義も持つものだ。拍節が和声に影響を与えているとすれば、それは強拍の周期的な回帰といった伝統的な拍節概念に重要な楔を打ち込むことになるからである。なお、分析素材としてバッハのフーガを用いる予定である。


(本発表では、小節、拍、拍の部分、あるいは複数の小節からなる高次小節などの構造を一般的に拍節と呼ぶ。)

日本音楽理論研究会第14回東京例会 発表概要  稲森訓敏

「「音楽のリズム」━マティス・リュシーとあなたの《演奏・指導》を変える彼の実用的リズム理論━」

 今から約140年位前、ヨーロッパにおいて、当時の演奏家たち(リスト、ニコライ・ルービンシュタイン、ハンス・フォン・ビューロー等)の演奏に多大な影響を与えた、マティス・リュシーの簡単な紹介と彼の実用的リズム理論について発表を行いたいと思います。今回は彼の実用的リズム理論の解説と実用性の証明のためのピアノ演奏による実演も同時に行います。なおこの理論はリュシーの画期的な理論「音楽表現概論」の中の一部の理論で「音楽表現概論」の発表はまた日を改めて発表させていただきたいと思います。

 マティス・リュシーは1828年スイスに生まれ、日本ではほとんど知られていませんが、ダルクローズの師であり、パリのコンセルヴァトアールの教師もしていて、ピアニストのコルトーなども彼の教えを直接受けた生徒の一人です。生涯に「ピアノ教育法の改革」「音楽表現概論」「音楽のリズム」「近代音楽におけるアナクルーズ」「記譜法の歴史」「ベートーベンの悲愴ソナタ」等の著書を残し、生涯、リズムと表現の理論を探求し191082才で亡くなりました。


 彼のリズム理論の特徴はその実用性にあり、この理論は演奏のために生み出されたもので作曲のためではありません。実用性を具体的に説明しますと、まず曲のフレージングを行い、その後3つのアクセント(メトリックアクセント、リズムアクセント、パセティックアクセント)を記入し、その分析結果を基に表現を完成させるという非常に単純な方法です。ただ方法は単純ですが、フレージングの分析にも分析のための法則があり、アクセントの分析にも分析のための法則あり、この法則こそがリュシーの理論の最大の特徴であり、これが我々の演奏を変化させる最大のカギなのです。

今回の発表ではこれらの法則を用いて曲を分析し、その分析結果を基に表現を作ってゆく実演を行います。これによってリュシーメソッドの全体を理解していただけたら幸いです。

日本音楽理論研究会第14回東京例会(3月30日)開催のお知らせ

Announcements: The 14th meeting of SMTJ Tokyo branch /30. March 2014/

関係者各位

暦は春分。こちら東京はようやく寒さが緩んできておりますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?
毎度お馴染み、日本音楽理論研究会から第14回東京例会のお知らせです。

今回の発表は、イタリアオペラ、ビートルズに関する発表の他、リズム論に関する発表が2件、の合計4件です。また、初の試みとして、限られた時間で主張の要点を最初にはっきり提示していただけるようにと、例会の“目次”にあたる“3分プレゼン”を導入しました。発表概要は順次ホームページ等で発表の予定です。
みなさまの奮ってのご参加をお待ちしております。

なお、当日資料準備のため、ご出席の場合はご一報いただければありがたく存じます。
また、研究会終了後の、「シュベール国立店」で行なわれる懇親会は毎回議論が白熱しております。
こちらからのご参加も歓迎いたします。

★★★ 日本音楽理論研究会第14回東京例会のお知らせ ★★★

日時: 2014330日(日)13:25-17:50 (1310 受付開始) 
【開始時間に注意! 5分早くなっています!】

会場: 国立音楽大学AI(アイ)スタジオ 
(JR国立駅南口下車、国立音楽大学付属幼稚園地下) 
186-0004 東京都国立市中1-8-25 TEL: 042-573-5633
参加費: 一般¥2000/学生¥1000 

■ 開会宣言 島岡譲(日本音楽理論研究会会長)
 
■ 3分プレゼンテーション(発表順) 

■ 発表135分): 
阿久津東進 【研究報告】「イタリアオペラはなぜ面白い?~イタリア語を知らなくても楽しめるその秘密を探る~レオンカヴァッロ《道化師》を題材にして」  ソプラノ独唱: 小川えみ ピアノ: 見上潤

■ 発表250分): 
寺内克久 【研究報告】「The Beatlesの和声進行分析から、コード進行による作曲技法を考える」 

■ 会からの連絡+休憩

■ 発表330分): 
大高誠二 【研究報告】「拍節の中の和声~「音の重なり」を超えて」
 
■ 発表450分): 
稲森訓敏 【特別講義】「「音楽のリズム」━マティス・リュシーとあなたの《演奏・指導》を変える彼の実用的リズム理論━」

■ ディスカッション

■ 懇親会 (1800-) 参加費\2000


※ 今後の活動予定 (会場はすべて「国立音楽大学AI(アイ)スタジオ」、参加費 ¥2000/学生¥1000) 

☆ 第24回例会 2014518日(日) 13301740

■ 「オドエフスキーの神秘主義と音楽観――『ロシアの夜』第6夜をめぐって」 見上潤
■ 「ストラヴィンスキー《結婚》」 池原舞
■ 「スクリャービンの神秘和音について(作品5257、他)」 佐野光司

☆ 第25会例会 2014105日(日) 13301745
■ 大分県立芸術文化短期大学卒業生による研究発表
■ 「自作作品の分析」 夏田昌和
■ 他未定

☆ 第15会東京例会 20141213日(日) 13301745
※ 発表者募集中

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Tokyo branch of THE SOCIETY FOR MUSIC THEORY OF JAPAN
日本音楽理論研究会東京支部 (見上潤 Mikami Jun
ブログ: 
The Society For Music Theory Of Japan, Tokyo
 
http://smtjt.blogspot.com/
ホームページ: http://www.geocities.jp/dolcecanto2003jp/SMTJ/index.htm 


Secretariat of THE SOCIETY FOR MUSIC THEORY OF JAPAN
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ホームページ:
http://sound.jp/mtsj/
870-0833 大分市上野丘東1-11 大分県立芸術文化短期大学音楽科 小川研究室気付  TEL &FAX 097-545-4429
Email:
ogawa@oita-pjc.ac.jp
本部facebook: http://www.facebook.com/groups/205456326182727/
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2013年11月10日日曜日

第13回東京例会 発表概要 平本幸生

 来る12月8日に行われる日本音楽理論研究会第13回東京例会で発表する平本幸生氏の発表概要を掲載いたします。

「自作曲の分析と、和声学の例外的用法」 

私たちが普段耳にしている音楽は、必ず、どこかの誰か(個)が生み出したものである。そして、その作品が、その作者を含め、他者の心を動かすということが、なぜ、そして、いかにして可能なのであろうか。

まず、上の問いの「いかにして」の部分について述べることにする。やはり、作者本人の実感に基づいて、その作者が作りたいように作った作品が、本人のみならず他者への感動をもたらすように思う。このことを基礎として、更に、楽曲の構成においては、客観的な実際があるようだ。これまでの数々の、音楽における実践、経験、また、分析の結果、ある共通性がみられ、それが現在、理論(theory)として知られるようになった。これらの理論には、リズムに関するもの、楽式に関するもの、旋律に関するものなど、多岐にわたる。そして、特に、和音とその進み方についての理論は和声学と呼ばれ、倍音などをはじめ、自然との関わりも深く、客観性が強いように思う。

ところが、興味深いことに、実際の音楽においては、これらの理論はいかなる場合においても、適合しているというわけではなく、理論からみて例外もみられる。すなわち、音楽理論は数学の定理や、物理学などにおける法則とは異なり、常に成立するものではなく、不完全であるという特徴がある。こう聞くと、これはよくないことのように思われる方もいるかもしれない。しかし、それは違う。逆である。むしろ、不完全性こそが実際の音楽に対し、芸術の理論としての役割を果たしているとさえいえるのである。その理由は以下の2つである。

1つ目は、その楽曲において、理論に対する例外的な部分が魅力的であったり、作者の個性が現れていると感じさせるからである。このことは、文面では伝えにくいが、例えば、俳句や短歌において成立した、五・七・五、五・七・五・七・七というリズムがあるが、時に字余りなど、そうする方がかえって魅力的であるといったようなことを考えてもらえばよいかと思う。このように、理論の不完全さは結果的に、芸術としての魅力、個性をつめこむ“すきま”を与えている。

そして2つ目は、音楽をすることの根本に関わることである。もし、仮に音楽理論が完全なものであったとしたらどうであろうか。すごく便利でよいものに思われるかもしれない。ところが、もし理論が完璧だったとすると、私たちが音楽をする際、その根拠を、自分自身にではなく、常に理論に求めるようになり、このことは、私たちの音楽をする本来の目的を果たさなくなる。作者の自己の実感に基づき、本当に作りたいように作ったものが、他者の心をも動かすとはじめに述べた。完璧な理論が存在する場合、このようなことは起こりえなくなる。理論の不完全性は、私たちが音楽によって自分自身と向き合い、主体性をもちうるということを可能にしている。

さて、まだまだ不勉強な身ながら、私もポピュラー風の調性音楽を作っている。その際、やはり例外的な事象に遭遇することがある。今回は、特に和声的な観点での例外が見られる楽曲を楽しんで聞いていただけたらと思う。

最後に、はじめの問いの「なぜ」の部分についてであるが、これは難問である。「私」から「普遍」へのこの不思議なつながりを、今後も考え続け、表現力を磨いてゆきたい。

第13回東京例会 発表概要 大野聡

 来る2013年12月8日(日)に行われる日本音楽理論研究会第13回東京例会で発表する大野聡氏の発表概要を掲載いたします。

 「モーツァルトにおけるソナタ形式と多声音楽技法の出会い(弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387第4楽章)」 

 「ヴィーン古典派」と後に総称される作曲家たちに共通する活力源としてあげられる技法が「主題労作」によるドラマティックな展開を活用した「ソナタ形式」であり、それをハイドンが「弦楽四重奏曲集作品33」によってほぼ確立したことが知られている。

 モーツァルトはそれらに刺激されて6曲の「弦楽四重奏曲」(通称ハイドンセット)を作曲し、この方面でのさらなる表現の拡大を果たしたわけだが、同時期にヨハン・ゼバスティアン・バッハの音楽(多声音楽)にも出会い、その影響を受けてもいた。

 「ソナタ形式」と「多声音楽」、この時代様式も異なる技法を融合した密度の高いドラマ性は円熟期のモーツァルトの特徴の一つでもあり、様々な様式を吸収し独自の世界に収斂していくモーツァルトならではの興味深い一面でもある。

 その試みが顕著な最初の作例としては弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387(ハイドンセットの第1曲)の最終楽章が挙げられるであろう。この楽章の構成を読み解くことは後の円熟した作品群を理解する一手段となるかもしれないと仮定し、特に「ソナタ形式」に構成された楽章の内部に含まれる「多声音楽」の要素を拾っていきたい。

 楽章のどの部分でどのように多声技法が使われているかを追いながら、モーツァルトが多声的な構築を盛り込んだ効果を(あくまでも最初の試みの例にすぎないが)確認していくことにする。 


 なおモーツァルトはこの楽章をもって「ソナタ形式」楽章に「多声技法」を盛り込む技法を完了させたわけではなく、その後さらに洗練された手法でより深い表現を引き出した作品(楽章)を生み出している。そこで当楽章が残した問題点(発展の余地)についても言及し、(可能な限り)後続作品の作例をも挙げて、(一曲の分析にとどまらず)モーツァルトのこの方面での発展についてのさらなる関心につなげてみたい。