「「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集 作品28」―楽曲構造とピアニズムの分析―」
「ピアノの詩人」とも云われるChopin(1810~1849・ポーランド→仏)のピアノ曲は、愁いを帯びた旋律の一方で、煌びやかな音の世界を繰り広げている。ピアノという楽器を縦横無尽に操り、絢爛豪華な響きを生み出している。この響きの素晴らしさがChopinの魅力であり、ピアノ音楽の新様式を開いたと云われる所以である。そこで、Chopinのピアノ曲の魅力を理論的に解明するために、彼の作品とピアニズムの分析に取り組むことにした。
ピアニズムとは、ピアノの機能(効果)を最大限に生かす工夫のことである。理論的な面から云うと、テクスチャー(縦糸と横糸から成る織り地のこと・音楽的に云うと音の組み合わせや構造)の問題である。「テクスチャーの多様化が起こるのは、器楽の勃興とともに非声部様式が発達してからです。非声部様式(器楽様式)の一番の特徴は『分散和音』の使用にあります。つまり、1個の『同時和音』をタテ・ヨコの音群に分けて奏する技術です。」と、島岡先生はテクスチャーについて書いておられる。
Chopinの作品のテクスチャーを調べてみると、分散和音を何オクターブにも広げていることが分かる。さらに、分散和音に沢山のゆれ(長大な音階や半音階など)が組み込まれている。そして、そのゆれが複雑になればなるほど、煌めくような輝かしい効果を生み出しているのである。今回発表する「前奏曲集 Op.28」にもピアニズムの素晴しい例は沢山見られる。
分析譜、還元譜、テクスチャー分解譜、全体区分図、分割譜などを用いながら、まずは24曲中、次の7曲を発表する。
第1番(ハ長調)、第4番(ホ短調)、第7番(イ長調)、第8番(嬰へ短調)、第13番(嬰へ長調)、第14番(変ホ短調)、第15番(変二長調)。
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